大文字草の栽培




大文字草を栽培するようになって二十数年
先生の栽培棚から、株分けしたものを頂いてきて少しずつ鉢数が増え、
そのうち株分けの手伝いも出来るようになって、その度に新しい鉢が増える。
しかし、失敗も数多く、せっかく頂いた大文字草を何株だめにしたことか。

その度に先生はおっしゃる。
「失敗? ハハハー いいから、いいから、また持っていけばいい」
その一言に助けられながら、今日まで栽培を続けて来られたのかもしれない。

教えていただいた事は限りなくあるが、
中でも名札(大文字草の個々の名前)については忘れられないことがある
冬を越して春を迎えるたびに幾つかの鉢の名札は取れていた。
霜で持ち上がる、ネズミに掘り返される。と、理由はあるが、名札が落ちれば名前は分からず仕舞い。

そうして数ある大文字草の中で札落ちの鉢が増えた時、ぽつんとおっしゃったのが
「花だって、名前が無いと可哀そうでしょう」 という言葉だった。
教室で、生徒を呼ぶ時、一人一人の名前があるように、花にも名前がある
同じ大文字草でも一つ一つの花に個性があり、ふさわしい名前が付いているのだ。

それを忘れてはいけない、忘れたら花が可哀そうだ
また、名前を覚える事で、それに合った栽培方法を知る事が出来る
十把一絡げで考えては、この先の栽培が上手くいくとは言えない。

「花だって、名前が無いと可哀そうでしょう」
優しい言い方の中には、大文字草を含む山野草栽培への姿勢のようなものが伺えた
大文字草の栽培を続けられたのも、その一言のおかげと感謝しています。





先生については、山野草PHOTOのトップページ
山野草との出会いをご覧下さい。






以前(1990年頃)からの栽培記録より抜粋、一部付け加えました。

*春の植え替えのこと 

 4月の終りぐらいから植え替えが始まり、山野草全体から見ると、最後のほうになる。
キイジョウロウホトトギスのような根だと、株分けもずいぶん楽になるのにと思う。
大文字草の根は、黒くて細く、水に濡らすとペタリと指に張り付いてくる。
よくある失敗例では、根を切り詰め過ぎるということがある。
株を安定させる意味も含めて、ある程度は古い根を残しておいたほうがいいようだ。
あとは、細かく分け過ぎないこと。

*肥料

ここ数年は元肥を与える事を止めて、植え替えから2週間を過ぎた頃に
置き肥として有機質の固形肥料を置き、その後は開花までに数回、活力剤をかけるだけである。

 以前は、植え替えのときに、元肥としてリン酸分の多い緩効性の化学肥料を少々を少々、
鉢の上には置肥として有機質の固形肥料。
しかし、肥料がききすぎると株も葉も大きくて、可憐な感じがなくなってしまうようだ。

*殺菌・殺虫

 植え替え・株分けのときにベンレ−トの粉を直接つけている。
根にカビが付いているときは、根を短く切り詰めて、
やはりベンレ−トを濃い目に水に溶いたものに10分前後の時間浸けておく。
また、植え替え後にかける水には必ず活力剤を入れている。

薬剤
ここ数年は、植え替え後に一回と、梅雨明け頃に一回、
殺虫剤と活力剤を溶いたものを全体にかけている。
(殺虫剤はアクテリックを使用)

殺虫剤の散布をする前の事。一茎一花の白鳳凰にヨトウ虫が付いた時は困ってしまった。
せっかく伸びてきた花茎が、毎日一本ずつ倒されていく。鉢の土をかき出してみたが虫はいない。
その年はとうとう白鳳王の花を見ることができなかったのだが、
後になって先生に話したところ、鉢ごと水を張ったバケツに漬けてしまえばいいとのこと。
なるほどまったくその通りでした。考えがまわらなくて困ったものです(笑)

*置き場所 の 変化

大文字草の栽培小屋を作るまではあちこち移動しながら栽培を続けていた。
家の東側にある玄関の前やMハウスに置いたり、イチジクの木の下など、
97年に山草棚を作ってもらって、しばらくはそこが置き場となっていたが
2000年に車庫を改造して栽培小屋を造り、現在に至っている。

Mハウスに置いたときは、鉢の向きを変えてやらないと葉の伸び方が片寄り、
イチジクの木の下のときは開花時になってから、イチジクの落ち葉に悩まされていた。
山草棚は冬の間の札落ちもなく、ネズミの食害に悩まされる事もなかったが、
ヤマセなど、強風に当たって葉に傷がついたり、鉢が乾く事もあった。

 

*冬越し− 栽培小屋を作る前

 以前の冬越しは地面に置いての雪の下だが、いつも春になると、何鉢かはラベル落ちがある。
また2〜3鉢はネズミの食害にもあった。
育苗箱などには入れているが、地面に直接置くのがいけなかったのかもしれない。
山草棚を作って以降、ラベル落ちも、ネズミの食害も解決。
棚の上での冬越しに、最初は不安があったが、それほどのマイナス面は無いように思う。

*水やり 

 第一に鉢を乾かさないこと。
自生地では山奥深く滝の下など、常に水がかかっているような、
夏は薄暗く、周りの木々や植物で風は遮られ、湿度の高い場所らしい。

鉢の上から真っ直ぐにかける水と、あとは蓮口を横に向け、
葉ダニ対策も含めて葉裏にも掛けるようにしている

以前は秋の花後から春の植え替えまでの間に、鉢を乾かすことがよくあったが、
栽培小屋ができてからは、雪布団をかける事で解決。




栽培記録より抜粋


1996年4月

 腕の浮腫みで作業ができず、夫に鉢を運んでもらう。植え替えも、無理かもしれない。
(1992年乳ガンの手術を受けていて腕の浮腫みはその後遺症))
今年から無花果の木の下に、置くことにした。
Mハウスだと、花色が上がらず。雪中梅は花数が少なくなる。




 1998年
 6月5日・エチゼンダイモンジ咲き始める。
97年に棚を作って、一番楽になったのは、鉢の移動かもしれない。
もう一つ、浮腫みが出てから作ってもらったものに、片面にゴムの付いた、小さな木槌がある。
植え替えのときに、鉢の縁を握り拳で叩くのが辛くなって作ってもらったものだが、
腕が楽になった今でも、いろいろな鉢の植え替えに役立っている。



1998年10月

 今年の春に来たばかりの「レンゲ」が、濃いピンク色の花をきれいに咲かせている。
今年はほとんど植え替えをしていないので、良い花は期待できない。
来年は植え替えと株分けをしっかりやる予定。
「ワラベ」もとても可愛らしい花を沢山付けている。これも新顔のはず。
やはり毎年の植え替えは欠かせないのかもしれない。
新しい用土の中で新しい根を延ばす事が大事なのだろう。
庭に置いてある様々な鉢の中で、自然実生のダイモンジソウが花を付けている。
うっかりしているうちに結構大きな株に育っているものもあれば、こじんまりと咲いているのもある。
びっくりするほど大きなピンクの花を付けているのもあるのだが、
何年も育て続けている株よりもしっかりしているのは実生の強さなのだろうか。

 

用土 硬質赤玉小粒・硬質鹿沼中粒・十和田砂小粒の等量混合
富士砂少量・ゼオライト少量
駄温鉢。株の大きさによって、3.5号〜5号鉢まで使い分けている
肥料 バイオゴールドを鉢の大きさに合わせて、二分の一個かその半分
活力剤 HB101 植え替えの時、薬剤散布の時、開花前、冬越し前などに使用
殺菌剤 ベンレート
薬剤 アクテリック  根ジラミ・毛虫・ヨトウ虫などの対策に使用



大文字草を育てての感想は、
意外と丈夫で、株も増えるし花も付ける。しかし簡単ではない山野草。
日焼けのするタイプとしないタイプ・日陰に置いたままだと花付きの悪くなるものなど様々。
秋の開花の時期には、その花の多様さに驚かされます。

ここに書き記したものは、全くの個人的な栽培経験です。
場所は津軽。北国の日本海側に位置します。


                     






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